巨人の二岡、林と日本ハムのマイケル、工藤の交換トレードが、発表された。二岡と林は、昨年まで巨人の屋台骨を支えた主力選手。人気もあった。生え抜きスター選手の放出に、チーム内でも波紋が広がっている。
●果てしなく進む外人部隊化
「これで8人目。スカウトは複雑だろうね」
さるチーム関係者がこう言った。
二岡は98年のドラフトで広島との争奪戦の末に逆指名で獲得した選手。このほかにも、95年ドラフト2位の仁志、99年3位の佐藤、01年1巡目の真田、3巡目の鴨志田、02年4巡目の長田、04年自由枠の三木、05年高校3巡目の加登脇と原監督が復帰したこの3年間で、実に8人ものドラフト上位選手が放出、クビにされている。01年7巡目の林のような下位選手も含めれば、淘汰(とうた)された生え抜き選手はその2倍近くになる。
栄枯盛衰、弱肉強食の激しい世界とはいえ、一方で他球団からFA選手をかき集めていることを考えれば、スカウトからため息が出るのも当然といえば当然だ。
今季は坂本、越智、山口といった生え抜きの若手がブレーク。球団は「育成の巨人」と胸を張るものの、故障からの復活を期していた林や二岡まで放出しては、「生え抜きに冷たい」という印象はやはりぬぐえない。
今季はスタメン9人のうち、7人が外様選手という試合もあった。先のドラフトで大型遊撃手の大田(東海大相模)を獲得して意気上がる巨人だが、渡辺会長はこう言っている。
「大田君か。あれを育てるのに、(原監督が)最低2年はかかると言っていた。ベテランも大事にしなきゃ。小笠原とかラミレスとかな」
やはり、大事にするのはリーグ連覇の立役者になった外様ばかり。原監督が「5連覇くらいできる土台を築きたい」と生え抜き中心のチーム改革の理想を描いても、この球団でそれを実現するのは、日本一になるよりも難しい。
●オンナ遊びもおちおちできない紳士の球団
二岡放出の動きは、昨年からあった。相手は同じ日本ハムで、金村(現阪神)と高橋信二を交換要員にした先方からの持ちかけに、「巨人側がリードオフマンの森本と左腕エースの武田勝を要求してご破算になった」(日本ハム関係者)という経緯がある。今回、そのトレード話が再燃したのはやはり、二岡のスキャンダルが大きい。
今年7月にタレントの山本モナとの不倫騒動を起こした。選手会長の、しかも故障で二軍落ちしている最中の醜聞に、球団の怒りはハンパじゃなかった。チーム関係者は「これで、放出は決定的になった」と言っていたが、その通りになった。
「林も週刊誌の常連選手だった。夫人のテレビ東京アナウンサーとは付き合っているときから写真誌に追いかけ回され、ファン女性とのトラブルも書かれたことがある」(チーム関係者)
紳士の球団を自任する巨人はスキャンダル、特に女性との醜聞には厳しい。2人の放出の遠因もそれだとすると、二岡と山本モナの騒動の現場に同席していた若手選手、ソープランド通いとモデルとの交際が騒がれた若手投手も時間の問題か。
●林の放出に震える西村、越智、山口
林はここ数年、ちぎっては投げてきた。
中継ぎとして定着した05年は54試合、06年は62試合に登板。抑えにつなぐセットアッパーとしてフル回転した。左ヒジを痛めていた07年は、「この世界は居場所を取られたらおしまいですから」と我慢して投げ続けた。一時は抑えも務め、自身初の球宴にも選ばれた。
しかし、我慢の代償は大きく、ヒジをかばって投げた影響で今度は左肩痛を発症。昨オフには左ヒジ遊離軟骨の除去手術を受けた。今季は11試合の登板で勝ち負けなし。防御率6.75と不本意なシーズンに終わった。
03年、04年は先発で3勝ずつを挙げ、中継ぎ転向後の05年から07年の3年間で157試合に登板し、パンクした揚げ句にトレードではやりきれない。
林は同じセットアッパーの西村健についてこうこぼしたことがある。
「あいつは頑丈だからうらやましい。頑丈なヤツは首脳陣に信頼されるから」
その西村健も06年は31試合、07年は57試合に登板。今季の前半戦も毎日のように投げ続けた。中継ぎのみの登板で一時は最多勝に並んだこともあったが、無理がたたって右肩を痛め、二軍落ちした。
今季は越智がチーム最多の68試合、山口が67試合に登板した。西村を含めた成長株のこの3人は、いずれも先発志向が強い。が、中継ぎでコキ使われ、故障した途端にポイッとやられないとも限らない。林の“居場所”を奪ったこの3人といえども、明日は我が身だ。
●得したのは巨人か日本ハムか
この交換トレードで笑うのはどっちか。
元ロッテコーチの得津高宏氏(評論家)がこう言う。
「右の強打者と中継ぎ左腕が補強ポイントの日ハムが明らかに得なトレード。日ハムはここ数年、貧打に泣いてきた(今季チーム打率.255はリーグワースト、82本塁打、533得点は12球団ワースト)。故障さえなければ二岡は十分中軸を打てる。遊撃の金子誠は今季故障がちだったし、完全にレギュラーが決まっていない三塁も守れる。林はまだ25歳と若く、巨人では抑えの経験もあり、マイケルがいなくなったクローザーのポストを任されてもおかしくない投手。かつて巨人から日ハムにトレードされた同じ左腕の岡島のように活躍するでしょう」
対する巨人が獲得する抑えのマイケルと外野手の工藤は、巨人の重要な補強ポイントとは言い難い。確かに守護神クルーンは首脳陣の信頼は薄いものの、今季41セーブでタイトルを獲得。山口、越智、東野らの台頭に豊田も健在で救援陣の層は厚い。
巨人の外野手争いはさらに激戦で、ラミレス、谷、高橋由、鈴木尚、亀井らがひしめく中に、工藤が割って入るのは容易ではない。
「32歳のマイケルはセーブ王を取った06年(39セーブ)に比べて球威に陰りが見える。今季は28セーブ(46試合、2勝2敗、防御率2.14)だったが、常に走者を背負う不安定な内容が目立った。工藤(104試合、打率.256)は俊足ですが、振り回すスイングで自らの足を生かし切れていない。巨人では2人とも厳しいポジション争いになるでしょう」(前出の得津氏)
巨人もさすがに分かっているはず。やっぱりこのトレードは厄介払いが真相か。
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